もう、随分前のことですが、
うちの塾では、夏期講習中にはすごくハードな授業と課題が出るんですよ。
生徒に負荷をかけて成長させるためにも。
でも、生徒によって状況は違うんですよね。
ある中3女子が部活がハードで、全国レベルなわけです。毎日毎日大変な練習があり、それでも彼女は川越女子高校に合格したいと強い思いを持っていました。
夏期講習が始まり、まだ部活引退もできない中、ある日、彼女が宿題をやってこなかったのです。
私は、勝負だなと思いました。
「部活忙しいよな。宿題減らそうか?」
そういうと、彼女は少し考えていました。
「おい、おい、悩んでいるのか。」
彼女は下を向く。
「そんな程度なら川女に合格できないから、志望校下げたほうがいいよ」
と冷たくいいました。
彼女は泣き始めました。
「宿題が完璧にできない日があってもいい。きみの全力で取り組んだ結果なら。でもさ、宿題を減らしてあげようかと言われたときに、きみは試されているんだよ。そこで心を強く持たないと、厳しい受験を乗り越えられないんだよ。」
彼女は涙を拭って強くうなづいた。
授業後、年上の講師の先生に
「あんなに頑張っている生徒を泣かせるんですね」
と言われました。批判という感じではなかったけど、理解できないという意味が含まれていた。
私は、
「宿題をなくしてあげたり、優しい言葉をかけてあげたり、そんなのは簡単です。でも、今の彼女には厳しい言葉をかけてくれる人のほうが必要だと思いました。私なりの優しさです。」と言いました。
私もいつも迷いますよそりゃ。俺は中1から教えてきた彼女の部活のことも知っていたし、厳しいことを言うのは辛かった。
でも、本人にとって一番必要なことをしてあげたいんですよね。俺の責任だと思った。
そして、彼女は見事第一志望校に合格した。
立派に試練を乗り越えた彼女。
卒業して、塾に遊びに来たときに、先生の話は全部覚えている、メモしているとまで言ってくれた。
この一つの答えが出るまでは先生ってのはずっと自問自答して辛いもんだよ。笑