自分で学び自分で伸びる力「自学自伸」を実現していくには
①目標設定とその管理
②自学技の習得
③質問力
④勉強の習慣化
この4つの柱が、自分で学び自分で伸びる力「自学自伸」には大切になってきます。
この力が身につくと、生徒自身で、自ら目標設定をし、今やるべきことがわかりスケジュールを立てて管理し、時には修正し、淡々と取り組み、理解し、学び、必要なら手助けを(能動的に)受ける。これが自然にできている状態が「自学自伸」が身についた状態です。
この力は、もちろん、社会人になれば、自分で問題発見を行い、その解決に必要なことが考えられるんです。そして、必要なら他者の力を借りて、自分で問題を解決していけるんです。そして解決した暁には、次の問題が見えているんです。こういった人間が、これからの社会では求められているのではないでしょうか。
自学自伸の隠れた最高の効用は「勉強が楽しくなる」ということです。
やらされたり、指示をされる勉強ではなく、能動的に自らが自らの方法で学習するので楽しくなるのです。
以下はさらに詳しく書いた部分になります。
自学自伸の四本柱
(1)目標設定とその管理
①目標にすべき適正レベルと管理
テストや何かの取り組みで、目標を掲げることが大事なのは言うまでもないですよね。まず、その掲げる目標のレベルについて書きたいと思います。
ありがちな例え方で、「馬に人参をぶら下げる」ということがありますが、馬の前に人参を吊るして走らせるとき、人参が極端に遠すぎたら、馬は届きそうもないと判断して全力疾走はしませんよね。少しずつその人参の方へ向かうかもしれませんが、走りにパワーは出ませんよね。
逆に、人参が簡単に届く位置にあったとしたら、バクっと食べて終わりです。走りません。それが続くとお腹いっぱいになって走れなくなります。人参は適切な距離に吊るすべきなんです。届きそうで届かないから馬は必死で走るんですよ。
もし生徒が、目標は立てるけど、一度も達成したことがなく、やる気が全然ないようでしたら、それは、目標が今の生徒のレベルには実現不可能だとおもってしまっているのかもしれません。例えばまだ平均点に行かない生徒に、親が「学年10位以内を達成したら、欲しい物を何でも買ってあげる!」なんて言っても、初回は必死に頑張るかもしれません。それでも惨敗です。次もある程度は頑張るでしょうが、全然達成できそうになさそうだったとしたら、もう次は頑張らなくなります。当たり前ですよね。
逆に、テストなどで毎回のように目標達成できているとしたら、それは褒められるべきではない状態の可能性もあります。低めの目標を設定してしまっているのかもしれません。テストの点数ならもう20点上を目標として掲げて頑張っていたら、未達成でも低めの目標を掲げているときよりも点数が高くなった、なんてことになりかねません。
今の力で頑張っても届きそうで届かないくらいの目標を設定しましょう。
②目標ありきのスケジュール作成
さて、適切な目標が立てられたら、今度は、それを実現するためのスケジュール作成です。ここでは順番に注意です。日時のスケジュールの前に、何をどの程度やるのかなどの内容が先です。その見通しが持てたら初めてカレンダーに勉強スケジュールを作っていくのです。先にカレンダーで教科別の勉強時間を決めてしまうやり方は良くありません。なぜなら、教科によって勉強時間が多く取られるものと、そうではなく集中力が必要なものとかあったりするので、学校や私生活のリズムに応じて、教科別、学習内容を把握してスケジュールを作る必要があるのです。
③学習時間のフレーム
勉強は、ただがむしゃらにやれば良いわけではありません。例えば「5時間勉強しました!」と言って、教科書をずっと写していただけとか、「10ページ問題集解きました!」と言って、丸付けもろくにしていないとか。これでは成績は上がりません。
成績が上がる勉強には、まず、大きなフレームがあります。
○インプット
知識や技術を得ていくことです。インプットには、授業を受ける。ノートをとる。教科書を読む。参考書を読む。などがあります。
○アウトプット
得た知識や技術をつかって問題等を解くことです。ワークを解く。教科書にある確認問題を解く。など、小テストなどから、定期テストや入試もそうですね。
そして、ここからが大事なのですが、私の造語になりますが
○「アウトプットイン」が、成績アップには欠かせません。アウトプットをしてから(しながら)吸収するという雰囲気の言葉ですね。
時間をかける比率としては、インプット:アウトプット:アウトプットイン=3:3:4くらいが理想だと思います。一番学力がアップしているのは、当然「アウトプットイン」の時間です。このアウトプットインの時間のために、その前のアウトプットが大事ですし、その前のインプットの時間が大事というわけです。
④モチベーション維持
モチベーション維持のためには、目標は書き出して目の前に貼り、周りに宣言をしたり、達成できたときの自分を妄想したり、それまでの過程を頭の中でシュミレーションする。さらに、目標を口に出して確認して、何が何でも実現させるんだ!と自分を奮い立たせる。そしてスケジュールを何度も確認して、確実に実行する。これが大切です。
まぁ、これを言っちゃおしまい、なんですが、そもそも、やる気やモチベーションというものに頼ってはいけないんですけどね。笑
しかし、それは確かに存在しています。人は、やる気に満ちているときと、そうでないときがあります。そんなことに左右されないためにも、勉強のスケジュールを淡々とこなしていくこと(後に触れる「習慣化」)が大事です。
(2)自学技の習得
①適切な問題集参考書の選定
さて、生徒自身が自分で学んで自分で伸びていくために、まず、適切な問題集や参考書の選定が大事です。
サッカー初心者にいきなりオーバーヘッドキックの練習をさせてもできるわけありませんし、サッカーが嫌いになること間違いなしです。同じように、勉強していくには、適切なレベル、適切な内容の問題集や参考書を選ぶことが大事です。
これは、生徒や保護者の方だけでは難しいところがあります。学校が用意した副教材、市販の教材、塾専用教材など、世の中にはたくさんの教材が存在します。これらの教材はピンからキリまであって、レベルも内容も様々です、必要としている本人に合うものを、それなりに教材知識のある詳しい人(学校の先生、塾の先生など)にアドバイスをもらうのが一番です。
②解説の扱い
自学を進めていく段階で、解説を適切に扱えない子は100%伸びません。
問題を解いて、答え合わせだけする生徒もいますが、解説が大事なんですよ。間違えた問題の解説を読んで理解する。解説が理解できなければ、適切な質問をする。そうやって伸びていくんですよ。
そもそも、解説がしっかりしていない教材は使えません。我々塾講師が教材選びで大事にするところです。
(3)質問力
我々は教えない塾を目指します。生徒を伸ばす意識の低い先生は、しっかり丁寧に教えます。「先生!ありがとう!わからない問題を、すぐにわかりやすく教えてくれて!」なんて言われたりしているのでしょうか。実はこれは良くないんですよ。その瞬間はスッキリしますが、スッキリすることが目的ではないですよね。こんな先生は、本当に生徒を伸ばす気はないか、それか、本当の伸ばし方を知らないんですよね。
そもそも生徒の質問の仕方が大事です。
「せんせー、わかりませーん」「ん?どこが?」「全部」「あれ?その質問の仕方でいいんだっけ?」そこから質問の仕方の指導が始まります。
わからない問題があったら、まず解説を読む。そして、その解説内で理解できない場所をピンポイントで質問する。
「解説のここの部分が、なぜこうなるのか、こう考えたんだけどわからないんです」
と、質問というよりは、分からない部分の説明をさせるんです。ここで、先生はさらに簡単に教えて終わりにしないで、ヒントや質問返しで生徒の頭を活発にする。これが生徒を伸ばす先生です。
もちろん生徒の段階によっては、丁寧に教える段階(リハビリ段階)も必要です。しかし、その後は上記の理由で、我々は「教えない塾」を目指します。
特に家庭教師や個別指導では、この必要な「余裕」がとれていないことが多い傾向にあるので注意が必要です。
(4)勉強の習慣化
①習慣とやる気
まず、歯を磨くときに、やる気なんてものは必要ありませんよね。これは今までの生活で身に付けた習慣だからです。勉強も習慣化が大事です。
私には2歳の娘がいて、歯磨きをさせようと毎日奮闘していて、とても身近な問題です。大人になれば、歯を磨かないと虫歯になることを知っているので、しっかり歯を磨きます。強制されなくても歯を磨く習慣が身についています。しかし子どもは、虫歯のリスクも歯磨きの効用も理解していませんから、いくら説得しようとしても難しいのです。さらに子どもは、目の前の遊びが楽しくて、歯を磨くのを嫌がります。
昨夜も奮闘しました。そこで、モノで釣ったり、罰則に近いことをしたりしてでも、親は子に歯磨きをさせます。習慣になるまでは粘り強く頑張っていきたいと思います。
さて、勉強の習慣を作るには、最初のうちは、少しコツがあります。遊びやその他の誘惑があることも多く、勉強が当たり前の習慣になるまでは、多少の強制力や環境が必要なんです(理想は、自らがその大切さに気付き、能動的にできるようになることです。それまでは親や先生の力が必要です)。
②行動が先にあってやる気になる
何かに取り組むときに、「やる気」がある無いってよく言いますけど、やる気は、自分で「出す」ものですよ。「やる気があるから勉強をする」いいえ。ちょっと違います。「やる気を(自分で)出して勉強する」ですね。さらに「勉強をするからやる気が出てくる」わけですよ。運動もそうです。仕事もそうですよね。まずは、始める。習慣化するまで続ける。そして、自らが一生懸命やることが大事なんです。
学生時代の部活でも、スタメンでもなくずっとベンチだった人でも、すごくやる気に満ちていて、楽しそうにしていたメンバーいるでしょ。一生懸命やっている人って楽しそうじゃないですか。逆にスタメンでもテキトーにやっていたり遅刻したり休んだりしている人って、楽しそうじゃないんですよね。
つまり、目の前のことに一生懸命になってみることが大事なんです。そうすると、なんでもやる気になれるんです。物事の上手い下手は無関係です。
まとめると、「やる気」に頼らずまず始める。そして一生懸命やる。そうするとやる気(らしきモノ)も出てくる。それを続けていると当たり前になってくる(習慣化)。そのために、多少の強制力や環境が必要なのです。
自学自伸の実践
うちの塾では、定期テスト前は、目標設定からスケジュール作成、その管理を行います。日々の学習では、うちの塾生は自学自伸note(オリジナル作成)を使って学習しているので、自然に「自分で学んで自分で伸びる」スタイルが身に付いていくようになっています。
塾での自学自伸授業の雰囲気は、うちの塾の先生の授業の雰囲気を以下にご紹介します。
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先生は教えすぎちゃいけないんです。むしろ、「自ら学ぶ」余白 =あえて教えない部分を残しておく必要があるんです。
例えば、「現在完了形は 『have +過去分詞』で、継続用法は『ずっと〜している』って訳すよ!」なんて教え方はしません。こんな授業なら、生徒が自学自伸する余白はゼロです。
僕の授業では、導入で生徒の興味を引きつけて、そこからたくさん例文を出して、生徒自身に気づかせていくよう誘導します。
生徒「もしかしてhave+過去形なんじゃない!?」
先生「お!いい感じ。でも③の文はどう?」
生徒「eatenだから過去分詞か!」
生徒「sinceは〜から って訳すんじゃない?」
先生「つまり、形は? 訳し方は?」
生徒「have+過去分詞、ずっと〜している だ!」
このように先生が導いていけば、自分で頭を使って学んでいきます。教わったのではなく、自分で学んだことだから、定着率も良い。
大事な部分でも、導入、ノート板書でも、一切教えていません。生徒には「自学自伸してほしいから、あえて教えてない部分がある。先生に教わってないところ、大事だと思う説明には線を引いてから、解き始めること。」と毎回説明しています。
そして、問題を解いたら、自分で丸つけし先生を呼びます。けれど教えません。こちらも生徒に伝えていることですが、「先生は教えないからね!ミスした問題も正解している問題についても質問するから、解説読んでから呼ぶこと!」と説明しています。解説を丸々読み上げる生徒にはどんどんツッコミます。例えば、
先生「この正解していた問題、説明して!」
生徒「there は 副詞だから、toはつかない」(解説をただ読み上げただけ)
先生「それってどういうこと?副詞ってなに?」
生徒「…わかりません。」
先生「そこを自分から先生に質問できるようになろう!副詞っていうのは〜〜〜〜」
こんな感じで、「わかった気になっている」部分にツッコミを入れて、「解説をただ読み上げるのではなく、自分なりの言葉でまとめ、理解できているか」を確認するようにしています。